母の引越しは、母とどう生きたいかを言葉にする機会をくれた。「旧実家と共に生まれ直す」という引越し。

Photo by Shawnn Tan on Unsplash

ようこそ。

昨日は母の引っ越しのための、もと住んでいた家の片付け。

そして今日はこれから住もうとする家を整える作業。

「引っ越し」という一言でまとめていたけど、「前の家を片付ける」ことと「引越し後の家を願うような住まいにしていく」ことは、全く異なるものだと気づいた今日でした。

前の家を片付けるのは、期限が明確で、片付けが終われば完了。

引越し後の家を整えるのは、ずっと住んでいくことを考えると明確な期限はなく、暮らしながら願う状態にし続けていくプロジェクトでもある。

それぞれについて、取り組む姿勢や、目的の置き方、そのためにどう進めていくかは、ずいぶんと異なるものなのだと、引っ越し後の家を整えようとする中で気づいたのでした。

今日もRikoさんを入れた3人のパーティーで取り組んだ私たち。

母の中で、引っ越し後の家を具体的にどうしたいかが十分に明確でなかったため、作業の進み方は昨日とはまた少し違った風合いを持っていた。

  • 作業量が大きいため、より長期なプロジェクトとして捉える必要があること。
  • その全体像が全てでなくともある程度把握できているのは母だけであること。
  • そしてその全てに私やRikoさんが関わるわけではないこと。

その条件下では、昨日の片付けと比べて指揮の取り方がずいぶんと難しいものになることがわかった。

何かを捨てるかどうか、何かをどこかに置くかどうかということひとつにも、明確な判断基準を作ることが難しい。

そんな中で、3人の人間がこうした方がいいんじゃないか、いやこのほうがいいんじゃないか、と話していくのは実に疲れるプロセスのようで、自分が昨日とは異なる種類の疲れ方をしていることに気づいた。

名状しがたい疲れ方だったけど、自分が望んでいるような母との過ごし方ではないことは感じられていたため、母との帰り道、「家の整理や引越しをどう進めていくか」の前に「引っ越した後の家でどんな日々を送りたいのか」をもっと話そう、と話した。

そして、先に書いたような理由で自分はとても疲れたのだと思うということと、

母と話したいのは、具体的な事柄について「こうあるべき」や「こうやったほうが効率がいい」という議論ではなくて、

「母がこれからどんな人生を生きたいのか」ということや「母がどんな日々を暮らしていきたいのか」ということなんだ、と話した。

母とどう生きたいか

漆喰を塗る準備をする母

話してみて、自分がずっとそう願っていたことも自覚することができた。

これまで母と話す機会の中で、お互いの人生のことを話すことが出来たり、お互いに今どんなことを感じて生きているか、そしてお互いに対してどう感じているかを話せているときは本当に嬉しいし、母とそうしたことを話せる自分であることを幸福に感じ、誇りにも思った。

けれど、例えば電話で、母が引越しに関するあれこれに追われていて、その具体的なことの相談をされたり、その中で感じたことを話されたり、ということはあまり楽しいものではなくて、もちろん力にはなりたいのだけど、こんなことばかりを話したいわけではないんだけどな、と感じていた。

そのことを、あらためて自覚することが出来て、母と話したいのは、もっと抽象度の高い、母の願いや、母がどう生きたいのか、というところだし、自分の願いや、自分がどう生きたいのかなんだと確信できた。

そこから、「私が母とどう生きたいか」ということと、この「引越し」であり、「母が旧実家と生まれ直す」というこのプロジェクトがぴたりと重なった。

引越しのプロセスに、他の仲間にももっと関わって助けてもらえたら良いよね、と話していて、そのためにも母がどんな人生を願い、そのためにどんな日々を送りたいのかが明確になっていることが必要だと思っていたけれど、そもそも「家を整える」ための具体的なゴールイメージを明確にすることが、この作業を進めるためには必要だったのだ。

母は、旧実家にあったものをできるだけ捨てていたが、それでも使えそうなものは残していた。お金のことを気にしていることも含めて、まだ使えると感じたからだった。

けれど、今回の引越しはただの引越しでなく、「家と共に生まれ直す」ものであることが、母と話す中で現れてきた。

そのイメージが、「お金をセーブして、気に入っているわけではないけどあるものを使う」という引越しから、「少し余分にお金がかかっても、気に入ったものに囲まれて暮らせるようにする」という引越しへの変容を生み出していった。

他のことを決めるにも、そのコンセプト、大事にしたい想いが判断基準になってくれて、決断も楽にできるだろう。

このことは、「差し当たって必要なことから取り掛かる」よりも「どんな状態を心から願っているのか」というゴールイメージを明確にすることが本当に大切なんだと強く腹落ちする体験だった。

明日は、こうして話せたことも元に、今回手伝える最後の作業の一日を送ろう。

冷えた足をあたためるためにみんなで足湯! 今日も楽しんだ!

この機会のおかげで、母とこうした話をするのがより私たちらしいのだという関係性へとまた進化することができたと感じる。それは私の人生にとって大きな収穫だ。

他にも収穫があるけれど、それはまた書こうと思います。

そして、母のこの引越しであり、私も育った旧実家と共に生まれ直すこのプロジェクトを助けてくれる人を募りたいとも思っています。そのことも、また書きたいと思います。響いた方は、ぜひ、大切な母を助けてもらえたら嬉しいです。

それでは、また会いましょう。

この記事を書いた人

Seita
Seita
システムファシリテーター
株式会社musuhi 取締役COO / Chief Dialogue Officer
ひとつまみの希望 主宰
世界と変わるコトバ研究所(NVC インテグラル理論 U理論 つながりを取り戻すワーク システム理論 等を統合的に扱い「私から、世界と変わる」ための研究・実践活動)


東京生まれ。大学時代から環境問題に取り組み、社会人時代に15年続く環境NPOの代表理事を拝命。2011年に鹿児島に移住、対話・ファシリテーションを鹿児島のまちづくり・地域コミュニティの文脈に導入する事業に参画。2017年4月に合同会社むすひを共同創業、「対話を核に組織が文化から変容していく」組織変革プログラムを仲間と運用。現在は「協働の質を高め、チーム・組織の中での対立も扱えるコミュニケーション:NVC」のオンラインスクール・コミュニティ事業や、第一人者たちと日本での展開に取り組む。


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